講師インタビュー

リスクは冒して当たり前、失敗は自分で決める

パフォーマコースレジェンド講師 全米で最も知られる日本人俳優マシ・オカ/ 俳優・プロデューサー・脚本家

海外ドラマ「HEROES」にレギュラー出演し、全米で最も知られる日本人俳優としての地位を確立。ジョージ・ルーカスが設立したインダストリアル・ライト&マジック社のエンジニアだった経歴もあり、現在はプロデューサー、脚本家としても活躍する。

幼少期からアメリカで育ち、「HEROES」では英語で書かれた台本を自ら和訳して演じた

日本にはメソッドがない

アメリカの俳優はほとんど、演技について専門的な勉強をしています。なぜなら、そうでない人は書類審査だけでオーディションで落とされるから。日本と比べて俳優を目指している人の数がケタ外れに多いので、特殊なケースでない限りトレーニングを受けていない人は使われません。キャスティング側からは、そんな俳優を使うのは時間のムダだと判断されます。
 それに対し、日本は「現場で学べ」というケースが多く、メソッドが確立されていないと感じます。プロの世界でお金をもらっているのに、不思議ですよね。成功するにはセンスや才能も必要ですが、アメリカの俳優学校に通ってメソッドをトレーニングすれば、現場経験がなくても最低限のレベルには到達できます。だから同じように、僕もまずは基礎となるメソッドを教えていきたいと思っています。
 僕は大学で舞台芸術を専攻しましたが、演技はもちろんさまざまなものを学びました。大道具の勉強、演劇の歴史、哲学的なものもありました。アメリカではスタニスラフスキー、ストラスバーグ、マイズナーが三大メソッドとされていますが、それを教えている日本の学校はあまりないと思います。
 たとえば泣きの演技だけでも、匂いを使って昔の記憶を取り戻して泣く、お父さんが死んだときを思い出す……など、いろいろな方法があります。そのなかで自分に合った手法を選ぶべきで、演出家に「こうやって泣け」と指導されるものではないと思います。深みのあるキャラクターは外からではなく、中からつくるもの。それをサポートするのがメソッドなんです。

ハリウッドを目指すなら個性を出すこと

 教える立場になったときは、「You are enough(あなたで十分です)」と言っています。自分にとって当たり前のことでも、ほかの人にとって斬新かもしれない。だから、あなたの個性を全面的に出してください。他人はあなたになれないんです。
 日本のキャスティングでは、個性を出しすぎるといやがる演出家がいると聞きます。でも、プロデューサーや監督は、いい素材をどうやって調理するかが大切。わざわざ個性を消させて演出家の色に染めるより、個性を活かした指導をするのがハリウッドの考え方。日本の役者がアメリカでオーディションを受けるときに、どんなキャラにも対応できるように、真っ白な状態にして来ることがありますが、それはアメリカでは「やる気がない」と受け止められる。
 なぜなら、ゼロから80に引き上げるのは監督の仕事ではないから。それは本人の役割です。白紙からなにかを生み出すより、120から100に修正するほうが簡単です。だからオーディションでは、全面的に自分の個性を出すことが大切なんです。求められる演技を当てるより、監督に影響を与えること。第一印象が大切です。もし監督がイメージしていたビジョンとは違っても、「そういうやり方もあるのか」と考えが変わるかもしれないし、もしくは指導してそれに役者が対応できるかを見ていたりもします。 
 キャスティングのウラ側を見ていると、演技力とは関係ない理由で落ちることもあります。主役との身長差が大きいとか、元カノに似てるからイヤだとか(笑)。だから、受かる受からないを気にせず、自分の個性をしっかり見せる。そこでインパクトを残せれば、そのときの役に合わなかったとしても、いつか使いたいなと思ってもらえるはずです。

学校でネットワークを作ってほしい

 沖縄は英語が使われる機会も多い一方で、琉球の伝統も残っていて、多文化に対してオープンですよね。それに豊かな自然は、クリエイティブな心を刺激してくれるので、発想もオープンになる。都会は雑音が多く、どうしても集中できないことがあるので、自分の可能性を広げるにはとてもいい環境だと思います。
 僕の理想とするビジョンは、USC※のようなフィルムスクールです。プロデューサー、ディレクター、ライター、アクターなど、それぞれの専門を目指す人がいて、最終的にはみんなでひとつの作品を制作する。それは授業としてのおもしろさもありますが、なにより将来のネットワークになる。学生時代、一緒に苦労した仲間が有名な監督や俳優になり、また一緒に仕事をするというのはよくある話で、とても意義あることだと思います。学校は授業内容も大切ですが、OBのネットワークにも価値がある。人間関係を築く場としても活用してほしいです。

日本人が全米で活躍するための道しるべとして、今後も多くの挑戦を予定していると言う

リスクを楽しむ気持ちで挑戦を

 この業界を目指すのであれば、やはり探究心が必要です。いろいろなことに関心を持ち、常に挑戦する心を忘れない。日本人は否定から入りがちで、石橋を叩きすぎて壊すことすらありますが、グローバル思考では、リスクを冒して当たり前という考え方があります。
 特に学生時代は、まだまだ安全な空間です。プロになったらむずかしいかもしれないですが、学生は失敗してもいいんですよ。それが、次のなにかに必ずつながる。僕もたくさんの失敗と呼ばれる経験をしてきましたが、どこかひとつでも学べることがあれば、自分のなかでは成功として処理してきました。それがあったからこそ、いまがあるんです。学校のなかではリスクを楽しむくらいの気持ちで、いろんなことにチャレンジしてほしいですね。

※USC
University of Southern California/南カリフォルニア大学。全米最古の映画芸術学部があり、ジョージ・ルーカスなどを輩出

Netflixオリジナル作品
『Death Note デスノート』

自らを「考え方はアメリカ人、心は日本人」と表し、日本企業の海外戦略におけるアドバイザーとしても活躍。2017年8月に公開されたハリウッド版「Death Note/デスノート」にも、プロデューサーとして参加した。現在は人気ゲーム「ロックマン」の実写化プロデュースも進行中。
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