講師インタビュー

エンターテインメントの社会的意義を伝えたい

プロダクションコースレジェンド講師 知識と経験で舞台のすべてを設計する前田三郎/ 舞台プロデューサー

サンシャイン劇場支配人や明治座統括部長などを経て、現在はキョードーファクトリー代表取締役社長、公益財団法人としま未来文化財団評議員。長年、舞台制作やプロデュースに携わり、公共の劇場と提携した市民演劇的活動にも力を入れる。

舞台の世界に入り30年以上。多くの劇団や役者と切磋琢磨しながら名作を生み出してきた

「必ず人の役に立っている」仕事だから

 私は29歳のとき、池袋にあるサンシャイン劇場の支配人になりました。そのころ「いつかは自分たちの時代が来るから、新しいエンターテインメントをみんなでつくろうじゃないか」と語り合っていたのが、吉本興業の大﨑社長やキョードー東京の山崎社長です。ちょうど劇団☆新感線やキャラメルボックスが出てきたころでもあり、いのうえひでのりさんや成井豊さんたちと私も一緒に育っていったような感覚でしたね。当時は上川隆也君や堤真一くんたちもとても若く、舞台の上で輝いていたのが印象に残っています。彼らもいまや日本を代表する俳優になりました。そのような人々と一緒に汗をかいてやってこれたのはとても運が良かったと思います。沖縄ラフ&ピース専門学校ではエンタメに携わる人たちの哲学や理論、そして方法論をみんなで学んでいきたいと考えています。
 昔はブロードウェイやウェストエンドに芝居やミュージカルを観に行ったり、アクターズスタジオに研修に行ったりもしましたが、アメリカでは役者や演出家を育成するプログラムがしっかり確立しています。アメリカでは俳優やスタッフの多くは大学や専門の学校を卒業しており、映画、演劇の演技、ミュージカル、音楽、バレエ、モダンダンス、タップなどの実技と論理を、一通り学んでいるんです。なかでもいちばん大事なのは、エンタメにかかわる仕事の社会的意義をちゃんと教えていること。私たちの仕事はただ笑わせたり、泣かせたり、演技することが目的ではなく、観客に感動を与え勇気や希望を与えることが本当の目的なんです。「必ず誰かの役に立っているし、ちゃんと世の中のためになっている」ということを、エンターテインメント業界を志すみなさんにはしっかり理解してほしいと思っています。

プロデューサーは橋の設計士

 私は「舞台のプロデューサー」という肩書で紹介されることが多いですが、この仕事は「橋の設計士」だと思っています。川の向こうにいる観客に想いを伝えるために橋を架けるのです。原作を読んだりして企画を立てる、脚本家や演出家などのスタッフィング、そしてキャスティング。どれをとっても手を抜けない仕事です。どんな想いを、誰(俳優)がどうやって(演出)、観客に渡すのか。受け取った観客は、それぞれが想像を膨らませ旅をするのです。照明や音響、大道具や小道具、衣装やヘアメイクなどそれぞれのスタッフの存在も重要です。
 しかし、それだけがプロデューサーの仕事ではありません。制作費の計算も大切な仕事です。劇場費、ギャランティ、スタッフ費、稽古費、宣伝費などの総額を予算化してから入場料を決定します。どんなにすばらしい公演でも赤字になってはしょうがありません。チケットを売る作業も重要です。お金をかけて宣伝するのは簡単ですが、使える金額には限りがあります。だからセールスマネージメントやマーケティングの知識も必要になります。それらの仕事をすべてこなすのが本当のプロデューサーです。そこまでできないと、橋が落ちてしまいますから。

沖縄は世界を意識できる街

 沖縄で勉強すると、世界を意識できる人材になると思っています。小さな島だからこそ、世界を意識し、世界に目を向け、未来を切り開く力を培えるのです。
 そして沖縄は平和を大切にする街です。僕は学生時代に本部町で潜水士のアルバイトをして生活をしていましたが、本当にやさしい人ばかりで「みんな友達」、「みんな家族」のように私を受け入れてくれました。まわりの人たちが全員仲良しで、一気に家族が増えた気持ちになりましたから(笑)。

「いい子」じゃなくても大丈夫

 お父様、お母様へのお願いとしては、自分のお子様たちを信じてあげてください。そして大好きでいてください。私たちの世界では一人ひとりの個性を大切にしたいと考えています。親から「いい子になりなさい」と、言われるとお子様たちは「いい子になろう」とします。でも、それは個性を取りさってしまうことにはなっていないでしょうか。欠点はときにはとっても強烈な個性であり、才能になることがあります。その個性をうまく育てることで、強固な武器をお子様たちに身に着けてもらうことを目標のひとつにしたいと考えています。世界中の子どもたちがみんないい子になってはつまらないじゃないですか。

観客から感想の手紙をもらうことも多く「エンタメの役割」を意識するようになった

心も体も健康で、好奇心と向学心を持つこと

 エンターテインメントの世界で必要なのは、ひとつの意思を持ち、その意志を貫けること。そのためには心も体も健康であることが大事です。おごることなく、社会をよく見つめ、時代に必要なものを抽出して、それを物語に埋め込んで、映画、テレビや芝居を制作する。そこに観客が求めているものがあれば、観終わったあとに「ああ、よかったな」という気持ちになりますよね。観客に良き旅をしてもらうことが私たちの仕事です。とても簡単なことのようで、とてもむずかしいことなのです。
 この学校で学んだ子どもたちが、もし将来この業界で仕事がしたいと本気で思うなら、どうぞ私の会社にいらっしゃいと言いたい。そのかわり、英語や表現の勉強が必要だし、俳優の気持ち、スタッフの気持ち、観客の気持ちもわからないといけない。だからどんなことにも興味を抱いて、向学心を持ち、健康でファイトのある子を待っていますし、集まったみんなが沖縄の太陽のもとで育ってくれることを楽しみにしています。

シェルターなんようホール

開業前から関わる山形県南陽市のホールは、2年足らずで20万人以上が来場して大盛況に。ミュージカル『ブラスト!』の日本公演前には合宿地としても使用され、約40人の外国人が8週間滞在。町の様子は一変し、エンタメが地域を活性化させるモデルケースとなった。
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