講師インタビュー

わずかな動きや違いに気づける人に

CG・アニメコースレジェンド講師 『火花』を世界190カ国に送り出す古賀俊輔/ 映像プロデューサー

映画とCGアニメーション中心に、さまざまな作品を手掛けるプロデューサー。主な担当作品に映画『おしん』『殿、利息でござる!』、Netflix世界配信作品『火花』(又吉直樹原作)など。元京都造形芸術大学教授。株式会社ザフール代表取締役。

2017年11月公開の劇場版『火花』も手がけ、テレビドラマのプロデュース作も多数

クリエイターを育てない限り、未来が見えない

「プロデューサー」と聞いて、みなさんはどんな仕事を想像しますか? 直訳すれば「生み出す」。僕は「映像プロデューサー」ですので、企画のスタート段階から絡むこともあれば、決められた作品や予算でどう映像化するかをクリエイターと一緒に悩んで進める場合もあります。……と聞くとかっこいいですが、平たくいうと雑用係ですね(笑)。作品が世に出るまでの過程における、すべてのスキマを埋めていく作業。ゆりかごから墓場までめんどうを見る人であり、予算面とクリエイティブのバランスをどう取るかという部分では、プロジェクト全体の責任者という意味合いを持つこともあります。
 では、クリエイティブを進めていく上で一番重要で、大変なことはなんでしょうか? それは、白紙のキャンバスになにを描くか、です。そして、最近よく業界内で話題になるのが「白紙のキャンバスに設計図を描ける人間がいない。もっと育てないとダメだよね」ということなんです。
 特に危機感を抱くのは、クリエイターを目指すような人たちであっても、みんな同じ話しかしてないこと。たとえば、映画でもみんな同じ作品しか観てないから、話をしてもおもしろくないし、それぞれの個性が埋没してますね。
 一方で、韓国をはじめとした海外留学生と話をしてみると、とても意識レベルが高い。そのとき思ったのが「あぁ、これは日本、そのうち抜かれるな」ということです。市場の広さでいえば日本よりも小さい韓国人のほうが、意識は全世界に向かってる。結果的に、国内市場だけで考えてしまう日本とでは、予算の掛け方だって違ってきます。業界の将来について考えると、クリエイターをもっと育てない限り、未来が見えないんです。

クリエイティブの基本は「自然との融合」

今回、沖縄ラフ&ピース専門学校の設立計画を聞いて「いいな」と思ったのが、沖縄という立地です。なにより自然に溢れているのがいいですよね。僕は、クリエイティブの基本は「自然との融合」だと考えているので、とても理に適っていると思います。なにかを生み出す、という点において、どんなに一生懸命パソコンに向かっても、実は未来は見えません。でも、ほとんどの専門学校では、パソコンの前に座って技術に特化した人物を育てようとしています。もちろん、CGなどの作業はうまくなるし、その能力が就職につながる場合もあるでしょう。でも根本の部分でクリエイティブを強くするためには、作業ができるだけじゃダメなんです。
 クリエイティブの環境は、良くも悪くも東京や大阪に集中してますが、「教える」という点では、むしろ地方にこそ可能性はあるんじゃないかなと思うんです。地方は不便な部分もあるし、人を集めるのは大変かもしれない。でもその代わりに“美しいもの”がある。それを最大限に感じられるような教育をしていくべきだと思うし、その環境で感性をどう磨いていくか、というチャレンジだと思うんです。

桜が散る“速度”に感動する人はなかなかいない

そもそも、クリエイターに求められる資質とはなにか? 月並みですが、僕は「人間力」だと思ってます。地球や宇宙という大きな枠の中で、人間がどう生きていけば幸せなのか……ちょっと哲学っぽいですけど、そういうことが日常的に考えられる人であるべきだと思うんです。
 たとえば、東京で道を歩けばコンクリートばかり。ただ、時にそのスキマから葉っぱが芽生え、花まで咲かせる強い生命力を宿していることがあります。これを感じられる人間であってほしいんです。ふつうに歩いて「急がなきゃ」なんて言ってるようでは、クリエイターにはなれないと思います。
 新海誠監督の作品に『秒速5センチメートル』というタイトルがあります。これは、桜の花びらが舞い落ちる速度だそうです。桜が満開になったときに「キレイだな」というのは、誰でも思うこと。でも、桜が散る速度に感動する人はなかなかいないし、その感性はやっぱり特別なものです。ほかにも、夏ならホタルの飛ぶ速度、秋なら紅葉が散る速度、冬なら雪が舞う速度。ふつうの人が見過ごしてしまうほんのわずかな動きや違いに気づける人間を育てていかなきゃいけない。それは、教えられることじゃないかもしれない。でも、やらないであきらめるよりは、やったほうがいいだろうなと僕は思ってます。

大学で教授を務めたこともあり、若手クリエイター育成にも精通する

この学校はどこよりも「自由」であるべき

この学校でもうひとつ魅力的なことは、吉本興業が手掛ける、という部分。だって自由だし、なんでもありじゃないですか。それはとても重要なことで、型にはめて人を教育したらいけないと思うんです。人の能力は無限大であり、一人ひとり違うもの。だからこそ、能力が発揮できる場所をどう作るかが大事になってくる。なにかを画一的に教えるんじゃなくて、能力の高い子がいれば、そこに合わせた授業を組んだっていい。人間って、初めての挑戦は怖いけど、でも、トライしたら案外簡単にクリアできたりするんです。
 いまの若い世代は、なにかカベにぶつかったとき、横に動いてかわそうとしがちです。でも、それじゃ永遠にそのカベは越えられない。まずは、越えることを覚えなきゃいけない。それこそが人間の成長じゃないですか。そして、成長すればクリエイティブも上がるんです。そのためにも、この学校はどこよりも「自由」であるべきだと思っています。ときには「みんなで海に行こうぜ!」という授業があってもいいかもしれない。大事なのは、そのときになにを学ばせるか、だけですから。

Netflixオリジナルドラマ『火花』

芥川賞を受賞し、累計250万部以上という大ヒットとなった又吉直樹の小説『火花』。誰もが注目した映像化は、まずは劇場映画でも地上波ドラマでもなく、Netflixでの世界配信という新しい選択となった。統括プロデューサーとして全体の設計図を描き、世界190カ国に配信された。
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